合奏協奏曲?

■合奏協奏曲と協奏曲

 時たま合奏協奏曲と協奏曲を混同してる解説を見かけるのですが、協奏曲という名称が時代によって様々な様式を指しているのが原因の一因だと思います。

 協奏曲は「競う」という言葉から来ているように初期はアンサンブル(合唱や合奏)の曲を指していました。つまりソナタとほぼ同義語だったわけですが、バロック時代初期になって独奏楽器群(concertino)と合奏楽器群(tutti)の対比効果を狙った様式が生まれました。

 これが合奏協奏曲(concerto grosso)と言われるものです。古い解説本では直訳して「大協奏曲」と書かれています。初期バロックのコレッリやトレッリの作品がこれに当たり、後期バロックのヘンデルやジェミニアーニに受け継がれました。具体的な構成としては楽章構成はバロックソナタの形式をそのまま受け継いでいて、通奏低音を伴う独奏楽器群と通奏低音を伴う合奏楽器群が交互に現れます。合奏部では独奏楽器群はユニゾンで参加しますので、多くの場合合奏楽器群を省いてしまっても室内ソナタとして演奏することが出来ます。(合奏協奏曲は、あくまで独奏楽器群と合奏楽器群の音量、音質の対比なので)

 一方、バロック後期になると協奏曲は独奏協奏曲と言うべき様式をもって広まってきました。こちらは通奏低音を伴わない独奏あるいは複数の独奏楽器のための協奏曲で、合奏協奏曲の名残はありますが独奏楽器群と合奏楽器群は独立した動きをすることになります。つまり合奏楽器群は独奏楽器を支える立場に徹します。テレマンやヴィヴィアルディ、バッハなどがこの様式になります。

■リトルネッロ形式と合奏協奏曲

 「リトルネッロ形式で書かれている曲は合奏協奏曲です」と記述してるとんでもない解説もありますが、リトルネッロ形式というのは曲の構造を指す言葉で、協奏曲は演奏形態を指す言葉なので別物です。

 リトリネッロというのは元々は後期ルネッサンスから初期バロックにかけて典礼劇やカンタータで曲間に演奏された短い楽曲を指し、この短い楽曲が繰り返し現れることによって作品の統一性や個々の登場人物を現しました。このリトリネッロのように曲の中に何度も繰り返してテーマが出てくる様式をリトルネッロ形式と呼ばれるようになり、この様式は好んで使われ、ソナタ、協奏曲、合奏協奏曲、アリアなどでも使われます。

 リトルネッロ形式はロンド形式の原型だと記述してる解説もありますが、ロンド形式の原型は古くからあり、ロンド形式はリトルネッロ形式とは全く別ものです。

■シンフォニアと協奏曲

 初期バロック時代のシンフォニアというのは器楽合奏曲全般を指し、ソナタとほぼ同じ意味で使われていました。つまり協奏曲や合奏協奏曲のように独奏楽器群、合奏楽器群を持ちません。(途中で部分的にソロが入ったりする事はあります)

 合奏協奏曲が現れるまではシンフォニア、ソナタ、コンチェルトの様式的な違いがほとんど無かったのが現在の混乱の原因だと思います。ただし、シンフォニアやソナタは器楽合奏を指すことがほとんどでしたが、コンチェルトは器楽合奏、声楽合唱どちらにも使われました。
コンチェルトと題された合唱曲で有名なものにシュッツの一連の作品があります。

■お願い

誤った記述があった場合指摘をお願いします。専門家ではないので誤認識もあると思いますので・・・・